前回の投稿ではまだまだプログラミング教育は大多数に浸透している状況ではない、と書きましたが、それではプログラミング教育を採用しない理由、についても実際に私たちに寄せられた声の中から少し取り上げ、その声に答えて行きたいと思います。

創造性が失われる?

 いきなりですが、とある教育関係の方よりこのご意見を直接面と向かって頂いたときには私と同席したスタッフは驚き、しばし二の句を継げませんでした。なぜなら、プログラミングは創造性を養うことは出来てもまさか失うことになるとは夢にも思っていなかったからです。しかしこれは私たちにっとっても良い勉強となりましたことを大変感謝しております。なぜなら、大人たちの間でも「プログラミング」というものがどのようなものか正しく伝わっていないために、プログラミング対して否定的な感情が芽生えていること少なくないことが分かったからです。

 その方のお話をよく伺っていると、「このボタンを押したらこう動く、という決まったルールの中でしか動けない子になってしまう」「一番創造性を養う大事な時期にゲームのようなデジタル機器に触れさせるのはよくない」とのことでした。この点は全く私たちも同感なのですが、いまいち話がかみ合っていないまま会話は終了してしまいました。

 プログラミングは様々なツールが出ており、そのツール上で学習することになりますが、ツールの使い方といった表面的なものを学ぶということではなく、そうしたツールを通じてプログラミング的な思考を学ぶということが本質です。プログラミング的な思考を会得すれば、どのようなツールや言語であっても対応出来る能力を身につけることが出来ます。

 プログラミングはテレビゲームとは全く違います。子どもたちの創造性を大きく広げる可能性のあるものです。テレビゲームも正しく楽しめれば、創造性を養うことが出来ます。しかしながら、プログラミングはテレビゲームを作ることが出来ます。テレビゲームは一定の決められたルールや世界の中でしか動けませんが、プログラミングはそのルールや世界さえ自分で創造することが必要になります。プログラミングは創造性はもちろんのこと、テレビゲームより遥かに多くの能力を開花させることが出来ると思います。

 私たちはこの経験を基に、私たちはこうしたプログラミングの概念を子どもたちだけでなく、大人である保護者の方々にもにしっかりと伝えて行きたいと考えるようになりました。そこで下記にいくつか大人(保護者)の方々のご懸念について説明したいと思います。

デジタルデバイスには出来る限り触れさせたくない?

 これはたしかに、私も子を持つ親として気持ちはわかります。現在のタブレットやPC端末ではプログラミングを学ぶだけでなく、ゲームや Youtube、インターネットブラウジングなど様々なことが出来てしまいます。もっと機能を絞った教育に特化した端末も出てもいいはずなのですが、あまりそういったものは見かけません。

 これに関しては、機能制限をうまく使っていくことが有効です。特定のアプリや機能へ制限をかけたり、また時間帯を指定して起動自体を制限することも出来ます。これについては、別途機会をつくって、私が息子と試行錯誤して得たノウハウをお伝えしていきたいと思います。

視力への影響?

 あまりにも没頭するあまり近くで画面を見続けてしまい、視力が低下するということもよくご心配されることです。こちらも2.と同じなのですが、デバイスなどの時間制限を設定したり、正しい姿勢などを教えて、外遊びとのバランスを保つよう親の管理が重要かと思います。近くのものを見続けることで目が悪くなるという意味では、読書や勉強でも同じことがいえます。だからといって、読書や勉強を全面的に禁止にするというご家庭は少ないでしょう。それと同じで、目が悪くなるからということでデジタルデバイスを一方的に禁止にするのではなく、読書と同じくこちらも保護者の管理が重要になってきます。

 また近視の原因についてはまだよく分かっていない面もあります。近視の原因には環境的な要因よりも遺伝の要因が一番大きいという説もありますし、テレビゲームと子供の近視との直接の因果関係についても、研究者の間でも「ある」という説と「ない」という説があり、きちんと証明されているわけではありません。確かに私の知人のプログラマーでも毎日没頭してディスプレイを見続けている割には視力に全く影響がない人もゴロゴロいますし、子供の頃から私の数倍様々なゲームをプレイしてきた友人もいまだに裸眼で生活しています。

 視力の影響を恐れてデジタルデバイスに一切触れさせない、という方針のご家庭もお見かけしますが、私としてはそれは「野球やサッカーなどは怪我をしたら大変だから禁止」「お外遊びは太陽の紫外線の危険があるから禁止」と言っているに等しく、それによって得ることの出来ない体験・学びなどの逸失利益も大きく、とてももったいないことだと思います。

テレビゲームにつながる?

 これはまず、テレビゲーム=悪という大前提があり、プログラミングをやっているとテレビゲームと親和性ができてしまい、将来テレビゲームや携帯ゲームにも移行しゲーム中毒になってしまう。ということも懸念される保護者の方もいらっしゃいます。まず私はテレビゲーム=絶対悪だとは思っていません。テレビゲームによって得られるものもあると思います。このテレビゲーム=悪の構造はたぶんゲームが単純化されたパチンコのような中毒性のあるものをイメージしているため生まれるのだと思います。もちろんそうしたゲームも中にはあります。最近の例で言うとスマホゲームのガチャなどです。あれは子供向けのパチンコといっても過言ではないと思います。そのようなゲームは断固として禁止すべきです。

テレビゲームは双方向

 ただ、テレビゲームには子供の可能性を引き出す素晴らしいゲームも沢山あります。一部のコンテンツが有害であるということであれば、テレビや本(マンガ)などでも同じことがいえると思いますし、前述したとおり一部の本が有害だからといって読書を全面的に禁止にするご家庭はないと思います。

 私はテレビゲームがテレビや本より上回っている点もあると思っています。それは双方向的であるという点です。テレビはただ一方的に流された映像を見るだけです。本は自分のペースで読みながら場合によっては戻ったり、先に進んだりすることも出来ますので若干の双方向性はあります。しかし、テレビゲームは何をするにもこちらからのインプットが必要となり、それに応じてゲームの内容は変化していきます。この双方向性は能動的に動く・自分の頭で考えるという意味で子供の成長・人格形成に大きく役立つと私は思います。

 したがって親がきちんと、子供がプレイしているゲームの内容、また時間制限等の管理を行ってして正しくテレビゲームを行うことが重要だと思います。最近発売した、Nintendo Switch は スマホのアプリで子供のゲームプレイを時間まで強制的に管理できるようになったのは素晴らしいことです。

プログラミングを学んだ上でテレビゲームをプレイする

 話が逸れてしまいましたが、テレビゲームとプログラミングを比較すると、プログラミングは双方向性・創造性という点ではテレビゲームを更に凌駕しています。更に、プログラミングの知識を先に得た上で、ゲームをプレイすると感覚がこれまでとは全く違ってきます。常にこのゲームのキャラクターの裏でどのようなプログラミングが行われているんだろう、ということを考えながらゲームを行うことになります。これもとても子供の脳の発達にも役立つこと思います。正しくプログラミングを勉強して、親の管理の下で正しくテレビゲームを行ってほしいと考えます。